この記事では「知的障害」の特徴と困り事(得意なこと)について書いていきたいと思います。
知的障害は精神遅滞とも表される、知的発達の障害です。
最新の「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版(DSM-5)」では、「知的能力障害(知的発達症)」とも表記されています。
知的障がいとは、3つの要素から判断される
知的機能の障がい
知的機能は知能検査によって測られます。平均が100、標準偏差15の検査では知能指数(Intelligence Quotient, IQ)70未満を低下と判断します。
日常生活や社会生活への適応機能の障がい
例えば、自分のことは自分で出来る、コミュニケーション(対人関係の構築)、社会参加など日常生活、社会生活を営むために重要な要素となるものです。
18歳以前に発現する
つまり、知的障がいについては、知的機能(IQ)だけではなく、適応機能の障害という要素をもって判断されます。
また、適応というのは、障がいをもたない人々を中心にして構成される社会の中で通用している期待や価値を基準にして、この基準にそぐわない状態や行動は逸脱しているとみなされている側面がある事を知っておいて欲しいと思います。
知的障がいの原因とは
知的障がいの原因は多岐にわたる。
出生前のもの(遺伝子・染色体の病気、先天性代謝異常、脳形成異常、母体疾患など)
出生後のもの(外傷性脳損傷、感染、けいれん性疾患、鉛・水銀などの中毒など)
そのため、実際には「原因を特定できない」ケースの方が多い。
様々な中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて、早期に治療・療育・教育を行う必要があります。本人のみならず、家族への支援も欠かせない発達障害のひとつです。
知的障がいの分類について
知的機能や適応機能に基づいて判断され、重症度により軽度、中等度、重度、最重度に分類されます。
- 「最重度」知能指数20以下、意思表示できること少なく、生活全般に援助が必須
- 「重度」 知能指数21~35、簡単な会話ができるが学習が難しく、個別的援助が必要
- 「中度」 知能指数36~50、会話、学習、生活はある程度できるが部分的援助が必要
- 「軽度」知能指数51~70、生活や基本会話ができ、保護は必要ないことが多い
の4つに分けられます。
厚生労働省が発表している判定の導き方の基準は以下のとおりです。
程度別判定の導き方
※知能水準の区分
Ⅰ・・・おおむね20以下
Ⅱ・・・おおむね21〜35
Ⅲ・・・おおむね36〜50
Ⅳ・・・おおむね51〜70
※身体障害者福祉法に基づく障害等級が1級、2級又は3級に該当する場合は、一次判定を次のとおりに修正する。
- 最重度→最重度
- 重度→最重度
- 中度→重度
※程度判定においては日常生活能力の程度が優先される。
例えば知能水準が「Ⅰ(IQ 〜20)」であっても、日常生活能力水準が「d」の場合の障害の程度は「重度」となる
軽度の知的障がい者であっても長期的サポートを要する場合もあれば、最重度と判定されていても十分な支援や援助を受けてきたことで一時的なサポートだけで生活に支障を生じない場合もあります。
つまり、知的な能力と日常生活における活動能力は必ずしも並行したものではなく、個人ごとに必要な援助は異なります。
では、知的障がいをお持ちの方は、社会生活でどのようなことに、困っているのでしょうか?
社会生活での主な3つの領域について
1. 概念的領域
①短期記憶
②実行機能:計画を立てる/優先順位/思考の柔軟性
③学習機能:学校の学習/経験による学習
④思考力:論理的な思考/抽象的な思考
⑤問題解決
⑥時間の概念
2. 社会的領域
①対人関係の構築:他者の発言の意味・意図の理解双方向のやり取りが難しい、会話の固定化
②感情のコントロール:年齢にふさわしい感情のコントロールが難しい(泣く・怒る・恐れる)
③社会的スキルの未熟さ(幼さ):純粋でだまされやすい、問題解決、規則や法の遵守、被害に合うことを避けるなど
3. 実用的領域
①健康上の決断
②法的な判断
③複雑な日常生活の課題(金銭管理、栄養バランス、子育て)
一般的な困りごとを列挙しましたが、勿論、全てがあてはまるのではなく、お一人お一人特性は異なります。
そして、なにより知っていて欲しい事は、それぞれ“苦手”はお持ちでも、それを上回る、その人なりの“強み”を必ず持っておられます。
例えば
知的障がいの方の基盤特性として挙げられるのが…
- 純朴さ 優しい 律儀さ 温順な人柄 など、人として大切なものをずっと失わずに持ち続けていらっしゃる方がとても多いです。
職場でも
- 決められたことを、決められたとおり正確に、繰り返して行う能力が高い
- 自分のペースを確保できれば、粘り強く業務に取り組む力に長けている
- 視覚情報の処理が得意
などなど
自分の興味があることや得意なことも個性によって異なり、その分野を探求、練習することでその能力が伸びていく可能性があります。
一度覚えたことは繰り返すことによって習得していける方もいますので、将来のお仕事として就職も可能かもしれません。
なによりネガティブな側面とポジティブな側面のバランスに注意しながら療育、成長、発達を意識していくことが大切です。
互いの「異なる点」を認め合いながら自分にはない「尊ぶべき側面」、「学ぶべき側面」に目を向けて。
障がいの有無に関係なく、人と人として尊重しあえる関係を結んでい頂きたいと願います。