本日の勉強会では、知的障がいをお持ちの方に向けた(※特に特別支援学校を卒業するタイミングで、就労継続支援B型事業所に入所される方を対象として)ライフステージを見据えた支援として、私たち就労継続支援B型事業所の支援員が、自ら取り組むべきことは何か?を考えてみました。
エリクソンの発達課題
発達段階 | 発達課題VS心理社会的危機 | 得られる力 |
乳児期 | 基本的信頼 VS 不信 | 希望 |
幼児期前期 | 自律性 VS 疑惑 | 意思 |
幼児期後期 | 自発性 VS 罪悪感 | 目的 |
学童期 | 勤勉性 VS 劣等感 | 有能感 |
青年期 | アイデンティティの確立 VS アイデンティティ拡散、役割の混乱 | 忠誠 |
成人期 | 親密性 VS 孤独 | 愛 |
壮年期 | 生産性 VS 停滞 | 世話 |
老年期 | 自我の統合 VS 絶望 | 知恵 |
各ライフステージでの発達課題として、エリクソンの心理社会的発達課題を確認しました。この説においては、生涯を8つの段階に分けて、そのそれぞれの段階において、心理社会的危機、つまり、それぞれの発達段階固有の葛藤が生じるとされています。
今回のテーマで取り上げる支援学校卒業のタイミング(青年期)においては、アイデンティティ達成VSアイデンティティ拡散という葛藤が生じるとされています。
また、このアイデンティティ危機に関してエリクソンは、アイデンティティは青年期だけの問題ではなく、生涯を通じて発達し続けていくものであると述べています。つまり、成人期、中年期、老年期においても、アイデンティティは危機を迎える可能性があり、その危機を乗り越えていくことでアイデンティティは生涯を通じて発達していくものであるとされています。
障害のある人に関わる全ての支援者(教育機関・福祉分野・家族)が【障害】や【自立】をどのように考えるべきかについて理念を共有することが必要。
その理念は教育分野と福祉分野で異なるものではなく、ライフステージを見据えて橋渡しできる理念として確立されるべき。
東京都社会福祉協議会
支援学校を卒業するタイミングで、B型事業所を進路として選んで頂く場合には、途切れてしまうことなく、橋渡しする大切さを改めて確認しました。そうすることで、支援学校時代に将来を見据えて先生方と共に日々取り組んでこられたことや、学生生活の中でみにつけたことを大切に、維持していけるように、また成長出来るような場所である事がB型事業所の責務であると感じました。
「特別支援学校卒業後における知的障がい者の就労・生活・余暇に関する現状と課題」
富山大学人間発達化学部2018論文より
上記論文では、知的障がい者の学校卒業後が豊かで充実したものとなるためには、卒業前にどのような取組がもとめられているのかについて検討することを目的として、就労、生活、余暇の視点で卒業生の保護者を対象として実態調査を行ったものです。論文の内容について、部分的になりますが、保護者の方の思いについてみていきました。
保護者の方の思い① 就労について
①できるだけ長く元気に通ってほしい
②今の状況を維持してしっかりとやってほしい
③学校の頃は出来ていたことが全くできていないが、作業所へは喜んで通所している
④毎日穏やかに過ごしてくれればよい
⑤毎日決まった場所に行きメリハリのある生活が出来ればいい
⑥職場での様子がわからない。本人に尋ねてもよくわからない
保護者の方の思い② 生活について
①親なき後のことが心配
②グループホームの入居(タイミング、身辺自立できるか)
③お金の管理
④学校を卒業してから運動不足
⑤身の回りのことをもう少し出来るようになって欲しい
⑥自己決定が出来るのか不安(生活や健康について自らの意思をはっきり伝えられない)
保護者の方の思い③ 余暇について
①家族以外とも過ごせる時間をつくってあげたい
②レパートリーを増やしたい
③お金を使う楽しみを感じてもらいたい
④だらだら過ごしていることが多いのでもう少し考えてほしい
⑤自分から興味を持ち、一人でも交通機関を利用して出かけて欲しい
⑥友人・交友活動・同年代の方との交わりが少ない
⑦外出、買い物には親が送迎している。移動支援を申請しているが未だに利用していない
論文より一部分を抜粋しましたが、保護者の方の絶えることのない不安や、子に対しての願い、希望が沢山記載されていました。私たちB型事業所の支援員としては、このことを心に留めておく必要があると感じました。
また、コロナ危機があり、私たちの生活は様変わりしましたが、特に障害福祉の現場においてもコロナ以前とは異なる価値観が台頭してきたように感じる昨今です。
JOTワークラボ神戸では、仕事を通じての人としての成長であったり、一人ひとり違う幸せの実現、自立に向けてのサポートがB型の使命と考えています。
支援学校を卒業し、まだ幼さの残る高校生だった方が、ラボでのお仕事やプログラムを重ねながら、少しずつゆっくりと一人の社会人として成長していかれる。その道のりを共に歩み、見守り、寄り添っていきたいと願っています。